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「天気と歯痛」って関係あるの?【ホントは病院歯科医に聞いてみたかった!口腔ケアの「ギモン」】第28回


島谷先生 のコピー 2.gif日々の口腔(こうくう)ケアに不安を感じていませんか? 各種調査でも、多くの看護職が口腔ケアの重要性を感じているのに、患者さんに十分な口腔ケアをできていないと感じていることが明らかに。でも、相談したくても、歯科のある医療施設は少なく、経験を頼りに行っているのが現状かもしれません。

そんな皆さんのために、現役病院歯科医師、島谷浩幸先生が日々の事例を参考に分かりやすくアドバイス。

口腔ケアの重要性や効果的に実践するための工夫など、皆さんの「ギモン」にお答えしていきます。 

 

悪天候で歯が痛くなりにくくするためには、便利ツールもうまく活用しながら、毎日の口腔ケアで口の健康を保つようにしましょう。

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雨の日に歯や頭が痛くなることがあるのは、本当ですか?

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本当です。台風や低気圧が近づくと歯痛や頭痛がする人がいますが、気象の変化で症状が出現したり悪化したりする病態は、天気痛や気象病などと呼ばれます。

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その他にも出る症状はありますか?

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高血圧や心筋梗塞、脳卒中、喘息などがあり、なかでもうつ病、関節痛は気圧変化に関連深いといわれます。


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特に歯痛が出やすい気象条件はありますか?

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2015年に岡山大学の研究グループが、歯周炎と天気の関連性の調査報告をしました。その結果、「気圧変化の毎時変化が大きい」または「気温上昇の毎時変化が大きい」という変化があった日の1~3日後に、腫れや痛みなどの急性期症状が出やすいと判明しました。

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どのようなメカニズムで歯痛が起きますか?

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いくつかの要因があり、まずは体力・免疫力の低下による炎症の悪化です。悪天候のストレスで体が疲れて免疫力が落ちると、歯周ポケットの歯周病菌や虫歯の虫歯菌が活発化し、急性症状が出やすくなります。

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その他の要因はありますか?

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はい。気圧や気温の変化に体を適応させるために働く自律神経ですが、激しい天候変化で自律神経の交感神経と副交感神経のバランスが乱れたり、ホルモン分泌に影響が出たりすると痛みを感じやすくなります。

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気圧の変化と歯痛の関係を教えて下さい。

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悪天候では低気圧が多く、気圧変化の歯痛が明らかにされています。このような歯痛は「気圧性歯痛」と呼ばれ、歯の中や周りの空洞にかかる圧力が低気圧で影響を受け、痛みを生じやすくなるといわれます。

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気圧の変化を受けやすい歯の状態はありますか?

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歯の内部に血管や神経等を含む「歯髄腔」と呼ばれる空洞があり(図1)、この中の空気が気圧低下で膨張すると歯の神経を刺激し、痛みになります。同様に大きな虫歯(図1)や歯根膿瘍・嚢胞でも痛くなります(図2)。スライド1.JPG

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歯以外でも気圧の変化は受けますか?

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副鼻腔や中耳腔、消化管などの空洞がある組織・臓器で同様の不快症状が起きることが明らかにされています。

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悪天候の際、口腔ケアで気をつけることはありますか?

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患者さんが歯痛の訴えを申し出る可能性があるので、あまり刺激を与えないような優しいケアを心掛けることが大切です。

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天気痛を防ぐ、何か便利なものはありますか?

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近年は、気圧変化と連動させて頭痛などの痛みの予報ができる機能を搭載した天気痛予報アプリが登場し、スマホで手軽に天気痛の予防対策までできます。

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どのような活用法がありますか?

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事前に天気痛が出やすいタイミングが分かれば、鎮痛薬(痛み止め)を準備しておいたり大事な予定を入れるのを避けたりでき、日常生活で痛みに備えた対策ができます。看護師自身だけでなく、天気痛が起きやすい患者さんにも活用できます。

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商品を選ぶコツはありますか?

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アラーム機能で事前に痛みが出やすい時間を教えてくれたり、鎮痛薬をいつ何錠飲んだかなど薬の服薬状況を記録できたりするものもあります。看護師自身や患者さんのニーズに合ったアプリを選ぶといいでしょう。

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天気痛で気をつけることはありますか?

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天気痛と思い込んで、本当の病気のサインを見逃している可能性もありますので、症状が長引いたり強まったりする場合は、速やかに医師や歯科医師に診てもらいましょう。

 

参考資料

  • Takeuchi N, Morita M et al: Relationship between Acute Phase of Chronic Periodontitis and Meteorological Factors in the Maintenance Phase of Periodontal Treatment: A Pilot Study. International journal of environmental research and public health 12; 9119-9130, 2015.

  • 梅津彰ほか:気圧性歯痛の原因として上顎洞炎が考えられた1例.日本口腔外科学会雑誌45(12),829-831,1999.

 

  【ホントは病院歯科医に聞いてみたかった! 口腔ケアの「ギモン」】

日々の口腔ケアに不安を感じていませんか? 各種調査でも、多くの看護職が口腔ケアの重要性を感じているのに、患者さんに十分な口腔ケアをできていないと感じていることが明らかに。でも、相談したくても、歯科のある医療施設は少なく、経験を頼りに行っているのが現状かもしれません。

そんな皆さんのために、現役病院歯科医師、島谷浩幸先生が日々の事例を参考に分かりやすくアドバイス。

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PROFILE

島谷先生プロフィールPHOTO_100px.jpg島谷 浩幸(しまたに・ひろゆき)

歯科医師・歯学博士。医療法人恵泉会堺平成病院・歯科科長

病院歯科に約20年勤務。京都文化医療専門学校非常勤講師を歴任。テレビ出演『所さんの目がテン!』(日本テレビ)などのほか、著書『歯磨き健康法』(アスキー・メディアワークス)、『頼れる歯医者さんの長生き歯磨き』(わかさ出版)など。雑誌連載・記事掲載多数。

 

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