余裕がなくなるとイライラが表に出てしまう ~アンガーマネジメント~【お悩み解決! 医療接遇パーフェクトレッスン】
後輩、先輩、上司、患者さんとの関わりの中で、「これはどう対応したらいいんだろう...」と迷うことはないでしょうか? ここでは、そんな皆さんが経験しがちな事例を取り上げ、その対応策をご紹介していきたいと思います。
新人スタッフ 連休前後など、業務が忙しくなり、慌ただしいと、患者さんにも、対職員や先輩にも気持ちの余裕がなくなり、冷たい言い方をしてしまう自覚があります。 先日、少し年上の仲の良い先輩から「キレてるんですか?」と言われて、「キレてません!」と言い返してしまいました。その後、先輩との関係が悪化して、挨拶も十分にできず猛省しています。どうしたらよいでしょうか。 |
素直に事実を認めて謝りましょう。当事者同士が難しい場合は、気心の知れた上司や先輩に立ち会ってもらうことが重要です。
日々のコンサルティングの中で、相談をもちかけられることがよくあります。先日、上記のようなことが部署内で問題になっていると、その部門のリーダーから相談を受けました。
「新人スタッフの態度が悪い。指摘した時の反応も、ふてくされた態度があからさまに出る為、とてもしづらい。1か月ほど様子をみていたが、態度が一層悪化したようだ」ということでした。
新人スタッフは、連休前には、先輩や職員たちにそのイライラをむけたり、「あーねむっ」(眠い)などとけだるい態度をしていて、先輩たちが、それぞれ連携して何か行っている際にも、椅子に座ってボーっとしているようなことが続いていたそうです。
概要を伺った後、その課題のある新人に近い先輩から具体的に話を聞き、問題になっている具体的な態度、言動・行動について教えてもらいました。いい時はとても人懐こくてかわいらしく、プライベートでもご飯を食べにいったり、あだ名で呼び合う仲だそうです。
その後輩は、以前からアンガーマネジメント(怒りやイライラを自分でしっかりとコントロールすること)が少し難しくなることがあり、対患者さんに対しても、時折強い言い方や、"タメ語"を使ってしまうことが気になることは、以前から共有していました。現在、課題となる具体的な態度は...。パソコンのキーボードを乱暴にたたく。物をバンと大きな音を立てておく。何もそのことについて言わない(「失礼いたしました」など、故意ではない場合は言葉添えをすることはマナーとして理解しているはずですが、何も言わない)。無視する。話しやすいと本人が感じた人にだけ声をかける。
この状況によって、関わる人達が、腫れ物に触るような(怒らせるとめんどくさい、仕事が一層やりづらい、正直傷つく)、むしろ周りの先輩が気を使いすぎて疲弊している状況になっていることが分かりました。どんどんその強さはエスカレートしていったようです。そこで、あまりにもひどい状況を察した距離の近い先輩が、「なにキレてるんですか?」と声をかけたところ、「別にキレてないです!」と切り返されたようでした。その後の関係性は言うまでもありません。
仕事は、好き嫌いで行うことではありません。社会ですから、最低限の気を遣う場所です。とはいえ、"過度に気を遣う"ことは、働く環境を悪化させてしまいかねません。アンガーマネジメントでも「必要に応じて指摘をすることは、上司としての必要不可欠な業務」「怒っていけないということではない」ということをお伝えしていますが、周りがその言動・態度・行動に振り回されてしまうことは行き過ぎています。
その後、その新人スタッフと個別面談をしたら、本人にも自覚がありました。事の経緯を素直に泣きながら話してくれたのですが、本人は、「自分の担当の仕事にアップアップしていて余裕がなく、自分が担当している仕事の忙しさを察して先輩に声をかけてほしい、手伝ってもらいたいという気持ちがあったが、ぜんぜん手伝ってもらえなかった。」とのことでした。それがイライラの原因でした。
一方、その先輩は、そのタイミングで少し難しい案件があり、リーダーと対策をたてるためのすり合わせを短時間で行なっていたようでした。これも、声かけづらいという背景がなければ、「今、〇〇の件で対策の緊急すり合わせしますが、何か困りごとがあったら声かけてください」と一言伝えられて、新人もイライラせず、先輩も冷たくあたられることがなくて済んだのかもしれません。「声のかけづらさ」は関係性で大きく変わります。
今回は後輩に余裕がなくて、イライラもやもやが、態度や言葉・表情にでてしまい、周りが関わりづらさを感じて疲弊してしまうという出来事でした。しかし、先輩から後輩に対しても同じようなことが起こりかねません。
今回は、私が立ち合いをして、新人スタッフが素直に謝り、先輩も冷たい言い方になっていたと思う、ということでお互い和解ができました。このように、ちょっとしたボタンの掛け違いによって仕事を進めづらくなることや、共有しづらいことで誤解を生んだり、ミスを誘発させることにつながりかねません。「ちょっといつもと違うけど、何かありましたか?」と言われた際には、素直に状況を伝え、関係性がよい状態で進めるように意識していきましょう。
私が提唱している「接遇6原則」(見る・聴く・届ける・伝える・意識する・安心感を与える)の中の「伝える」「意識する」「安心感を与える」に該当する事例です。
今回は当事者が素直に非を認めて謝ることで解決に至りました。素直さが大事だということがわかる事例だと思います。
【お悩み解決! 医療接遇パーフェクトレッスン】
近年、医療現場における患者様への対応方法が重要視されています。患者様に不平不満を感じさせないことは、クレーム予防はもちろん、多職種連携によるチーム医療の提供、そして、医療安全の確保においてもとても重要な要素です。患者様との良好なコミュニケーションを目指して、医療接遇に取り組んでいきましょう。
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PROFILE
小佐野美智子(おさの・みちこ)
株式会社C-Plan 代表取締役/医療接遇アドバイザー/医療経営コンサルタント
医療現場の問題解決型コンサルティングを25年以上行う。患者満足度を追求し、職場環境を良好にするための現場に即した先進的な取り組みを実践中。人にかかわる問題について解決法を構築、提案。年間300を超える講演・研修・コンサルティングを行っている。職場内において「安心・信頼・安全」を追求し安らぎのある空間づくりを作り上げることに尽力し、医療に携わる方々にアクティブでポジティブかつ、安らぎのある医療環境を組織の方々とともに作り上げることにまい進している。