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身だしなみはなぜ整えたほうがよいのでしょうか【お悩み解決! 医療接遇パーフェクトレッスン】

後輩、先輩、上司、患者さんとの関わりの中で、「これはどう対応したらいいんだろう...」と迷うことはないでしょうか? ここでは、そんな皆さんが経験しがちな事例を取り上げ、その対応策をご紹介していきたいと思います。

    

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身だしなみ基準が具体的にきまっていなかったのですが、最近人事部門より「ピアス、ネックレスはつけない」という通達がきました。

もちろんルールは守りますが、他の組織はどのような基準なのでしょうか。

 

今は多様性の時代ということもあり、世の中の流れとしては、身だしなみのルールは緩和傾向になっています。

しかし、医療機関は、「安全・安心・清潔」という医療安全の観点から、身だしなみに関しては一般企業などとは違う観点でまわりから厳しくみられている組織であることを認識する必要があります。仕方ないから守るルールではなく、整えることは"患者さんに安心感を与える"という医療人としての使命だと思っていただけるとよいと思います。

 

ピアスは、過去に、間違えて落としたピアスを誤飲する、もしくは、患者さんに刺さるというようなアクシデントが起こることがありました。医療安全の観点からも、その可能性があることが少しでも想定できる場合、医療者側が患者さんに不安を持たせることがないようにする必要があります。ネックレスも、間違えてつかんだり、ひっぱったりすることで患者さんだけではなく、職員のけがにつながる可能性もあります。また、おしゃれができない入院患者に対して、自分できないことに対する刺激を与えてしまうなど、嫌な思いをさせてしまうかもしれません。

実際に、医療現場で、患者さんにインタビューをした際、小さな赤ちゃんを抱っこした母親が「受付の人、ピアスしているけれど、うちの子がたまたま落ちたピアスを食べてしまうことだってあるかもしれないのに、医療者としての配慮が足りないように思います」とおっしゃっていたのがとても印象的でした。ましてや看護師であれば、患者さんの肌に触れる仕事です。ピアス、ネックレス、マニキュアをしていることに違和感を抱く患者さんは多い印象です。時代とともに価値基準は変わりますが、現時点では、装飾品はつけず、安全な医療を提供するという姿勢を見せて、第一印象で信頼や誠実さを勝ち取るほうが信頼関係の構築にもプラスに働くことでしょう。

医療機関は、来たくて来る場所ではないはずです。不安で、普段気にならないことまで気になるような場所なのです。心穏やかに過ごしたいという思いに反して、心配を増長するわけにはいきません。きちんとしていることが問題になることはないのですが、「このような身だしなみで、衛生観念は大丈夫なのか?」「プロ意識はどうか?」などと心配させるわけにはいかないのです。

最近では、自費診療で、美容などを取り入れる保険診療の組織も増えてきています。そのような組織では、多少許容範囲が広くなることがあります。ですが、基本的に保険診療の医療機関では、ピアス、ネックレス、ブレスレット、指輪などの装飾品はつけないことが基本となっています。もちろん、組織によっては、結婚指輪のみ、手洗いを念入りにすることを条件に付けることができるなど、許容範囲は異なりますが、患者さんが安心して関わりたいと思う「誠実さや思いやり」の表れが身だしなみなのです。

自分がどうしたかというよりも、相手がどう思うか、安心して来院していただける環境かどうかに目を向けていくことで、具体的なルールがない場合でも判断をするとよいと思います。組織のルールがあれば、そのルールに従い、ルールがないものは勝手に判断せず、先輩、上司に相談の上、指示を仰ぐことも適切でしょう。皆さん一人ひとりの身だしなみは、患者さんからみたとき、組織の代表として映ることになるのです。

身だしなみは、イコール安心感につながります。私が提唱している接遇6原則の「6.安心感を与えること」が身だしなみに該当する項目となります。今一度、身だしなみについて考えてみましょう。

 

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出典:『今日からできる医療機関の接遇向上術』小佐野美智子 著(労災保険情報センター)

 

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出典:『患者接遇パーフェクト・レッスン 2023年新版: 患者応対マナーのランクアップ教本・決定版 (2023年新版)』小佐野美智子 著(医学通信社)

  

お悩み解決! 医療接遇パーフェクトレッスン

近年、医療現場における患者様への対応方法が重要視されています。患者様に不平不満を感じさせないことは、クレーム予防はもちろん、多職種連携によるチーム医療の提供、そして、医療安全の確保においてもとても重要な要素です。患者様との良好なコミュニケーションを目指して、医療接遇に取り組んでいきましょう。

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PROFILE

小佐野美智子プロフィール小佐野美智子(おさの・みちこ)

株式会社C-plan 代表取締役/医療接遇アドバイザー/医療経営コンサルタント

医療現場の問題解決型コンサルティングを25年以上行う。患者満足度を追求し、職場環境を良好にするための現場に即した先進的な取り組みを実践中。人にかかわる問題について解決法を構築、提案。年間300を超える講演・研修・コンサルティングを行っている。職場内において「安心・信頼・安全」を追求し安らぎのある空間づくりを作り上げることに尽力し、医療に携わる方々にアクティブでポジティブかつ、安らぎのある医療環境を組織の方々とともに作り上げることにまい進している。

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