気を付けたい!入院患者の義歯(入れ歯)の管理【ホントは病院歯科医に聞いてみたかった!口腔ケアの「ギモン」】第27回
日々の口腔(こうくう)ケアに不安を感じていませんか? 各種調査でも、多くの看護職が口腔ケアの重要性を感じているのに、患者さんに十分な口腔ケアをできていないと感じていることが明らかに。でも、相談したくても、歯科のある医療施設は少なく、経験を頼りに行っているのが現状かもしれません。
そんな皆さんのために、現役病院歯科医師、島谷浩幸先生が日々の事例を参考に分かりやすくアドバイス。
口腔ケアの重要性や効果的に実践するための工夫など、皆さんの「ギモン」にお答えしていきます。
義歯は入院生活のQOLを維持するために不可欠なものです。
きちんと管理し、患者の快適な入院生活をサポートしましょう。

義歯(入れ歯)の管理はどのようなことですか?

入院患者の義歯の有無や使用状況を把握し、必要な時にすぐに使えるように正しく保管することです。定期的な義歯洗浄・消毒も重要です。

義歯の管理が不十分だと、どのような問題がありますか?

義歯の紛失の可能性があります。小さな義歯の場合、患者が外してティッシュに包んで放置することがあります。部屋の清掃時にゴミと間違えられて、捨てられてしまう可能性があります。

義歯の紛失で、どのような悪影響が出ますか?

義歯は噛む、話す機能を補うだけでなく、飲み込む嚥下機能もサポートし、前歯であれば見た目の顔貌にも影響します。義歯紛失により、これらの機能が失われます。

入院時の所持品検査で義歯の項目があるので、大丈夫だと思うのですが。

入院時に義歯はなくても、後日、家族が自宅から持参するケースがあります。また、逆のケースもあります。定期的に義歯の有無のチェックは欠かさないようにしましょう。

義歯の正しい保管方法は?

義歯を外した後は、患者個人の専用の義歯ケースに入れて保管しましょう。どのような義歯が入っているか、ケースのフタに明記すると病院スタッフにも周知できます。当院では、作成時に義歯にもネームを埋め込み、個人識別を徹底しています(図1)。

金属でできた義歯を紛失したのですが。

口蓋部が金属でできた金属床義歯は健康保険の適用外となるため、自費診療で作成されたものです。一般的に数十万円しますので、紛失すれば大きな問題になります(図2)。

他にも保険適用外の義歯はありますか?

金具がないタイプの部分義歯や、マグネット(磁石)が付いた義歯などがあります。 サイズや構造などによりますが、数万円~数十万円するのが一般的です。

義歯を使っているのに「入れ歯ははめてない」という高齢患者がいるのですが。

義歯を使用する世代は年齢層が高いため、認知症の割合も高くなっています。義歯の装着を自分自身で把握できていない患者も少なくないため、実際に口の中をのぞいて義歯の装着の有無を確認しましょう。

私の病院には歯科があるのですが、作ったばかりの義歯を紛失してしまいました。また作ることはできますか?

保険診療のルールで同一医療機関では、半年間、新しい義歯は作成できません。

そのような場合、どう対処すればいいですか?

自費診療で作成するのは現実的ではないため、退院後にかかりつけの歯医者などで作成するのが一般的です。

病院内で義歯を紛失した場合、誰が弁償するのですか?

紛失の原因が、本人のうっかりによるものか、病院側の管理の不十分さによるものか、原因により意見は分かれると思います。いずれにせよ、病院側の管理責任が問われる可能性があるので注意しましょう。

「入れ歯がない!」という状況でまずするべきことは?

意外に患者の口の中にあったり、枕元に落ちていたり、布団にまぎれていたり、身近な場所から探すようにしましょう。なければ、近くのごみ箱など徐々に探す範囲を広げましょう。

補聴器も類似のケースと思いますが、義歯との違いはありますか?

一番の違いは、義歯は補聴器と異なり、装着の有無が見た目では判断できないことです。実際に口の中を見て、装着しているか否かを確認するようにして下さい。
- 島谷浩幸:頼れる歯医者さんの長生き歯磨き.わかさ出版,2019.
※1 Willnext看護職向け賠償責任保険に加入していれば、万一患者さんの義歯を誤って廃棄してしまった場合も、再作成費用が補償されます。詳細はこちら
※2 Willnext看護職向け賠償責任保険に加入していれば、万一患者さんの義歯を紛失してしまった場合に、再作成費用がAプランで1事故当たり50万円、Bプランで1事故当たり100万円まで補償されます。詳細はこちら
※3 看護師さんが預かっていた義歯を紛失してしまった場合もWillnext看護職向け賠償責任保険に加入していれば、弁償の費用が保険で補償されます。詳細はこちら
【ホントは病院歯科医に聞いてみたかった! 口腔ケアの「ギモン」】
日々の口腔ケアに不安を感じていませんか? 各種調査でも、多くの看護職が口腔ケアの重要性を感じているのに、患者さんに十分な口腔ケアをできていないと感じていることが明らかに。でも、相談したくても、歯科のある医療施設は少なく、経験を頼りに行っているのが現状かもしれません。
そんな皆さんのために、現役病院歯科医師、島谷浩幸先生が日々の事例を参考に分かりやすくアドバイス。
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PROFILE
島谷 浩幸(しまたに・ひろゆき)
歯科医師・歯学博士。医療法人恵泉会堺平成病院・歯科科長
病院歯科に約20年勤務。京都文化医療専門学校非常勤講師を歴任。テレビ出演『所さんの目がテン!』(日本テレビ)などのほか、著書『歯磨き健康法』(アスキー・メディアワークス)、『頼れる歯医者さんの長生き歯磨き』(わかさ出版)など。雑誌連載・記事掲載多数。
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